悪夢になんかなりっこない

日曜日、車に4人ギュウギュウと乗り込み、高速を飛ばして長崎に向かいました。空は白いものの明るくて良い天気。私のピンクのウサギサングラスがキラリと光る!

私はわりと嬉しいことは自慢したがり・好きなものも自慢したがりなんだけど、この日曜日に行ったところはこっそりと秘密にしてしまいたいくらい、本当に素晴らしい場所だった。民家と民家の間、畑の横を通る離合も出来ないくらいの細い道。石垣の横すれすれをオンボロ車が通り抜ける。小さく海が見えてきて、光の中に奇妙な形をした真っ黒い影が見えたときのドキドキ感といったら!こんな恋を知らぬ人は地獄に落ちるでしょう!
船が2,3艘浮かんでいる、とても小さな港の端っこに車を停め、雑草が生えた小道を歩いて行くと、そこには屋根の抜け落ちたレンガ造りの、もはや遺跡といっても過言ではない建物がある。どこからか飛ばされてきた様々な種類の種は、長い時間をかけて屋根のないこの建物の中にしっかりと根を下ろし、建物の奥のほうへ行くと踏み込むことさえできないくらい、鬱蒼と植物が生い茂っている。崩れかけたレンガの壁に囲まれた空間で、雨水がたまって出来上がった小さな水路やねじれて縺れ合った樹木や、高いところに作られた小さな窓枠に小鳥が止まっている様子などを見ていると、そこがまるで打ち捨てられた植物園のように思えてくるのであった。本当は、戦争中に若者がたくさん死んでいった場所なのだが。

天気が良すぎて少し憂鬱な日の、皮膚感覚がおかしくなりそうなくらい静かで平らな海と、そこで目を見開いている私たちは、多分きっと世界中でもぶっちぎりでナンバーワンのキラキラぶりであった。海の底に沈んだ何かを暗示してるような形をしたコンクリート橋も、その下に埋もれている骸骨や誰かの大事な手帳や写真も、薄い膜のようなクラゲも、対岸に小さく見える真っ暗な洞窟とその入り口に建てられた鳥居も、鈍く光る錆び付いてしまった金色の時計も、この日はみんな眠っており、午後3時の真っ白い夢の間に、うろうろキャッキャと軽やかな靴と翻るスカートが体の上を飛び回ったところで、悪夢になんかなりっこないのだ。