がっかりイリュージョン

日が暮れてから別府タワーに登ってみました。前々から登ってみたかったのだけど、予想以上のがっかりイリュージョンでした。素敵だ。


誰もいない17階の展望室。スピーカーから流れてくるのはCCBとレベッカ。色褪せたソフトクリームのポスターとどうでも良い夜景。20円の望遠鏡を覗いたら、どこかのビルの厨房が見えた。ピントの合わない1分30秒。海なんて暗すぎて見えやしない。店番のおじさんはビールをジョッキに注ぎ、テレビを見ながら夕食をとる。埃の積もったヨン様グッズが蛍光灯に照らされる。

蒸し暑い夏の夜にこの椅子に座ってクリームソーダを飲みたい。不機嫌になって退屈して、グラスの水滴を見つめたい。天井に取り付けられた扇風機の音がうるさくて、エアコンはちっとも効かずに汗ばむのが好ましい。
でも本当は私がクリームソーダを飲みたいのではなく、昔の私に飲んでもらいたい。でもそれは不可能だから、それならどこかの少女に飲んでもらいたいのだ。くだらないことをくだらないとはっきり言うことができない窮屈な女の子にクリームソーダを飲ませたい。大人になれば嫌でも判断基準が増えてしまうのだ。悲しみを伴わないつまらない記憶を持つことは、私にはもうきっとない。私にはきっともう良いことか悪いことしか訪れないのだから。だから、つまらない夏の記憶を退屈な小学生に。