文房具と少女趣味の話

昔のノートを引っ張り出して中身を確認したら、課長!重要な証拠物件が見つかりました!と叫びだしそうになるくらい猟奇的で驚きました。ぺかぺかのキャンディーみたいなハワイアンブルーのボンボンで開かないようにとめてある、ショッキングピンクのリングノート。妹からもらった宇宙飛行士の形をしたボールペンが差してある。


先日、帰宅するとリビングのテーブルの上に郵便物や新聞などと一緒に、何やら小さな動物のイラストの切り抜きが置いてあって、結局それは妹の仕業だったのですが、チラシをわざわざ鋏で切り抜いてなぁ…と面白かったので(すごくオシャレだとかそういうものではなく、ただひたすらにファンシーなイラストだったのだ)後で問い詰めると非常にばつが悪そうにしていました。まぁ少女趣味過ぎるものね。
とはいえ、私の母は私たち姉妹を大幅に上回るほどの少女趣味の人で、数年前にヨーロッパへ旅行に行った際、飛行機の中にお気に入りの文房具一式を入れていたペンケースを忘れてきて、そのことを今でも悔やんでは心を痛め(とても可愛らしい魚のイラストがついた真っ赤な物差しや、長年愛用していたボールペンなどが入っていたらしい)また、去年の夏に母を駅まで迎えに行った際には、強い日差しの中をつばの広めな白い帽子をかぶり、ブルーのギンガムチェックのワンピースの上に白いガーゼ素材のカーディガンをはおり、足元は素足にサンダル、涼しげな籐のバスケットを持った母が歩いてきたときはさすがに「誰…?」と思いました。母は現在56歳。
小さい頃ドイツに住んでいたことがあったのですが、その当時に母が撮った私たち姉妹の写真は、そんな母の趣味が炸裂しており素晴らしい作品揃い。一番の傑作は、森へ行く途中の田舎道で撮った写真で、花がたくさん飾ってある古い民家の前に立つ私は、アリスみたいにワンピースに白いエプロンをかけ、麦藁帽子を両手で押さえたままカメラのほうを睨み付けており、真っ直ぐに切りそろえられた黒髪が風で少し揺れているのだ。