お仕事

私はいまとても面白いお仕事をしている。私の仕事について、細部にこだわって書けばそれはおぞましくも美しい世界であり、全体を通して書けばそれはまさしく小宇宙であり生物だとか生命だとか、そういう言葉の全てだったりする。私は仕事を通して、毎日生と死を繰り返しているような気がしている。一日の間で私は死に、そして生き返る。この仕事は、なんというか、私にとっては眩暈がするほどに恐ろしく、吐き気を催すほどに醜悪でくだらない、それにも関わらず「こんなものがこの世に存在したなんて」と毎日新鮮な気持ちで恍惚としてしまうくらい美しく魅惑的な世界なのである。いつか今の仕事のことを書きたいけど、今、私はこの仕事を愛しており、その魅力に翻弄され続ける一方で、この仕事に就いているということは私にとってとてつもなく不本意で屈辱的なことなので、どうしても書けないのであった。
私は毎日天使のような微笑を浮かべ、その内側にどす黒い暴力的な欲望をたぎらせている。全部が私の手にゆだねられているのに、私というものはその中に吸収されてしまって存在しない。私は仕事中に自分がなくなってしまったような感覚を何度も味わう。万能感と無力感、うっとりするような一体感と絶望するほどの孤独をいつも同時に味わっている。時々ぐちゃぐちゃに引っ掻いてやりたくなる。私も含めて全部を。いつかこんな気持ちを文章に出来るようになるんだろうか。私が今いる場所のこと、周りの人間のこと、壁を伝って歩く可愛い小さな蜘蛛のこと、無機物も有機物もいつかは皆朽ち果てていくということ。いつか今の私のことを、私の仕事のことを、誰かに伝えたいと思っている。冷静に、冷酷に、少しずつ話を進めていこうと思う。今の間違いだらけの私の言葉でも確実に言えることは、私の仕事はとても混沌としており、だからこそ一層、官能的であるということだけである。