休暇後半

遅ればせながら5月4日。夕方頃ようやく起きて温泉へ行く。夏の気配のする夕方の森をバスタオルと着替えを持っててくてく歩いた。私はここのところ温泉で連敗しており、何があったかっつうと湯船に湯ったり夢気分でつかっていると貧血になるという。脱衣所で顔面蒼白になり半裸で座り込むのはなかなか悲しいものであります。温泉へ行く度にそんな悲劇を起こしていたので、最近は従来から飲み続けているマルチビタミンとビタミンBに加え鉄分も飲むようにしていた(その後さらにDHCのエステミックスにも手を出しました)。おかげでこの日は貧血にもならず、見事な夕暮れを見ながらお風呂に入ることができた。夜になる瞬間をこの目で見てやろうと思ったが、シャンプーしてる隙に夜になっていた。夜は後ろから一瞬でやってきて、その一瞬は永遠のように続く。

5月5日。おばあちゃんの生まれ故郷をこっそり見に行く。私は子供の頃に1,2回遊びに行ったことがあるのだが、もう殆ど記憶にない。住所を頼りにおうちを探すが、住所のプレートがまるで貼られておらず見つからなかった。でも昔遊んだ神社は見つけた。そこは単なる農村地帯だった。田舎の農村で育った、神経質で臆病で迷信深いおばあちゃん。優しくて可哀想なおばあちゃん。
帰り道に宮内庁が管理している万葉歌人のお墓を見つける。鍵のかけられた門の奥にこんもりと盛り上がったお墓がある。それは田んぼと田んぼの間にある小さな山のふもとで、カブトムシやセミの匂いがする場所だった。すぐ近くには長い階段と神社もある。あれは腐葉土の匂いだよ、と教えられて、虫でも葉っぱでもいいけど私はこの匂いが好きだから私が死んだらここに葬り去ってください、と無茶なお願いをする。名前も知らない、詩人のひとと一緒に葬り去って。