さよならマーチ

土曜日。実家に帰って生まれたての子猫を触ったらギューギュー言った。5匹のうち1匹は死んで、あと何匹生き残るかは分からない。小さな鼻を指でそっとふさいだらきっとすぐ死ぬ。公園でカラスに狙われていた所を母が思わず拾ってしまったらしい、生まれたての子猫達。この前、強風の夜に突然目が覚めた私は、死ぬことはそこまで悲しいことでもないという確信を持った。もし死んでしまってもそんなに悲しいことでもない。でももし生き延びたら、がさつでずる賢くて毛並みもボソボソのあんまり可愛くないけどたくましい猫になってほしいと思った。生臭くて乾ききった港町の猫に。
夜はボールペン工場でボールペンのキャップをはめるゲームをして、工場長に3回くらいスカウトされたのでボールペン工場に就職してみたりした。「ボ」と書いてある帽子をもらって記念写真を撮ってもらった私は誇らしげでもあった。音楽なんてどうでもいいじゃない、ずっとボールペン作って湿った畳の部屋で寝たり起きたりしたらいいじゃない、とか思ったけどラジオから聞こえてくる音楽に震えたりする。うさぎも恋人も寝ていたので一晩中黙々とボールペンを作り続けた。