観光野郎

・新宿のマック
永石夫妻と会った。吉田戦車の近所に住んでいるというかおりさんは、いつ会ってもいいようにわざわざ喫茶店吉田戦車の本を読んでいるそう。でも会った事はないらしい。東京滞在中で可愛い女の子を見たのはこれが最初で最後であった。東京は人間が醜く見える街だと思ったけど、きっとあんまり間違ってない。

中野ブロードウェイ
客が一人しかいないメイド喫茶とメイドゲーセン(メイドさんが飲み物をくれる)を見た。ゲーセンというかゲームコーナーみたいのなんだけど、そこに突然メイドさんがやってきて飲み物を配っていた。何が何やらよく分からない。私はメイドさんに微笑まれてドキーンとしていた。タコシェ鳩山郁子豆本をぺたぺた触って薄紫のリボンを凝視した。中野シズカTシャツを購入。それから、おもちゃ屋さんでしっぽのちぎれたポップルを購入。このポップルは旅の間、みんなにかわいそうな設定や台詞をたくさん作られていた。でも、みんなポップルのことが大好きだった。

平将門首塚
日本三大怨霊のひとり、平将門。なんか普通におばあちゃんがお参りしてた(私は恐怖スポットだと思っていた)。ゆでたまごをお供えしてきた。音君が飲みかけの缶コーヒーを持ったままだと手を合わせられないという理由で何故か缶コーヒーをバッグに入れて、バッグの中をコーヒーまみれにしていた。将門の呪いといわれている話の一つに「ブルドーザーの運転手が転落死」というものがあったのだが、どう見ても転落するような場所がなかったので世界七不思議の一つだった。

・皇居
「のりちゃんの同人誌がお土産コーナーで売られている」「のりちゃんは日本画からトルーパーまで描けるのですごい」「のりちゃんは夜な夜なコスプレして広い敷地内を散歩している」「屏風の裏はのりちゃんが描いたトルーパーの絵になっていて、夜の間はそちらを表にして展示している」など、みんなの頭の中はのりちゃんのことでいっぱいだった。大きな木がたくさんあって気持ちがよかった。私は大きなものが好きです。

秋葉原メイド喫茶
店内に入るときに男性だと「御主人様がお帰りになりましたー」「おかえりなさいませー」と言われるんだけど、私は「お嬢様」と呼ばれたので嬉しかった。「奥様」って呼ばれてたらメイドさんを鞭でぶったりお尻に烙印を押したりするところでした。メイドさんはなんか薄汚れてた。店内にライオンの口から水が出ると思われる室内噴水つき時計が置いてあったのですが(私達が見たときは水は流れてなかった)その水の流れた跡が何故か赤くなっていたので怖かった。メイドさんに「どうしてあのライオンの口は赤いんですか」と尋ねたら「さぁ?でも最初は赤くなかったんですよー。いつの間にか赤くなってました」と言われたのでますます怖かった。いい年した男性3人+いい年した女性1人の混合団体は、それぞれ子供騙しなパフェだのライオンの血の色をしたカクテルだのを楽しんだ。秋葉は街の人みんながお父さんに見えた。

・原宿の中古ゴスロリ服屋
女性化願望のある音くんと、ロリータ化願望のある私がおおはしゃぎ。でも意外と高かったので購入は断念。原宿はみんなが好き勝手な格好をしていてすごくうらやましかった。ミサミサみたいな格好の女の子もたくさん見たし、頭につのが生えてる女の子も見た。みんな可愛くなくて醜かった。みんな顔が疲れてて楽しいことなんかひとつもなさそうで外が全く見えてなさそうでうらやましかった。みんな可愛くないんだけどそれを気にしていない感じがうらやましかった。つまり、薄っぺらい世界に簡単に埋没してしまえることがうらやましかったのだ。森茉莉も「恐るべき子供達」のエリザベートも「下妻物語」の桃子も、都会の女の子なんだなーと実感したのであった。都会の女の子はみんなファッションモデルでおめかしをしていないと罪になり、ギロチンで首を刎ねられるという。私ももうちょっと好き勝手な格好をしよう、でもその格好で街を歩くのは無理なので、山奥で可愛い格好をしようと思った。福岡ではわざわざ「外に目を向けないようにしないと生きていけない」なんてことはあまりないと思うけど、何故かというと確かに福岡の街自体は汚いが少し移動すれば美しいものがたくさんあるからで、でもいろんなものが勝手にどんどん目に入ってくるような街に住んでると、閉じこもったりフィルターをかけたりする能力が必要になってくるんだろうなぁと思った。東京はあんなに人が多くて汚い街なのに、青だの緑だの好きな色のセロファンをかけて美しいものとし自分の世界に埋没できるというのは本当にすごいことだと思う。東京は乞食のお姫さまがたくさん住む街。

目黒寄生虫館
ツェツェバエに刺されて死にたい。ホルマリン漬けの真っ白い寄生虫も面白いけど、2階の奥にある資料室が素敵だった。細いペンで描かれた寄生虫のスケッチ、辞典のような薄い紙、ぼろぼろになった分厚い背表紙。もし静かで大きな建物の中でこんなものに出会ってしまったら、きっと何時間も過ごしてしまうことでしょう。寄生虫館から出たら足下に白い小鳥がいて、何故かそれを寄生虫だと勘違いしたので自分の脳に驚いた。
でも悔やまれたのは、わざわざ目黒まで行ったのに目黒雅叙園に行きそびれたこと!(私の記憶が曖昧で、雅叙園って、雅叙園って、えーとなんだっけ?という状態だったのだ)ギィー…。
http://www.megurogajoen.co.jp/

・東京タワー
でかかった。巨大建築物が怖いひとは是非見に行くべき。ガラス張りのところで度胸試しをした。私と古守さんは怖がって、音君と大石さんは平気だった。たぶんゲーム脳でCGを見過ぎて現実と認識できてなかったのだと思います。昔読んだお話の最終回は、頭の上に小さなティアラみたいにライトアップされた東京タワーをのせて写真を撮るのだけど、異邦人の私には何も頭にのせるものがなかった。

・阿佐ヶ谷の音邸
ここを拠点として遊び回った。東京の人たちはキムタクがどこに住んでいるかもしらないので、この閉じこもったサブカル人どもめー、と思った。5人の大人が揃ったところを眺めると、本当にみんなもう若くないんだなぁと思っていろんな諦めがついた。みんな若ぶってるけどもうそんなに若くないよ!グーグルでイメージ検索してげらげら笑ってるけど、エロ漫画を回し読みしてげらげら笑ってるけど、歌いながらぬいぐるみを足で転がしてるけど、みんなもう若くない。音楽だの小説だの映像だのにうつつを抜かしている場合じゃなくて、みんな早く本分のブランコ番を全うするべきなのだ。でも地に足なんかつけたくなくて一生ブランコから降りたくない私。

・阿佐ヶ谷のハンバーグ屋さん
ジャモジさんがジャムおじさんからとられた名前かどうかなんてしらない。食べた肉の量も。