夜は後ろからやってくる。

土曜日夕方、海へ行く。強風で吹き飛ばされそうになりながら貝殻を拾う。流れ着いた板をまた海に流す。どこかで沈みかけたタイタニック号の乗客をこの板っきれが救うのだ。
砂まみれになった足を神社の水道でこっそり洗う。闇はもう間近までせまっていて、空の一部だけを残して黒く塗りつぶされている。ふと顔をあげると老婆に手を引かれた小さな女の子が私をじっと見ていた。夜の神社にはいかがわしさがいっぱいだ。
足を洗ってさっぱりすると、なにやら楽しくなってきたのでショッピングモールに行ってうろうろ。小さいカフェの隅っこでハニートーストを食べる。
先週のある夜、誰も信じてくれなかった話を私は木のうろに囁くみたいに低い声で話した。それは私にとって世界の秘密で、神様と孤独の話で、誰も信じなかった話。私はうつぶせになって顔だけを横に向けて話した。目を開けて小さいガラスに自分の姿がうつっているのを確認しながら話した。例えていうなら私は青い世界に住んでいて壁もコップも海も道路も全部青なんだよ、という話をしたとして、その人は赤い世界に住んでいて水もスプーンもりんごもテレビも全部赤で、だけど青い国は全部が青なんだね、面白いねという会話をしてるみたいな異文化交流だった。私は信じるか信じないかはわりとどうでもよくて、それで十分だった。異文化交流をした私はその日からまた安心して眠ることができたのであった。アイスクリームを食べているときも顔を洗っているときも、もし悪者に切り刻まれて古ぼけた雑誌みたいにして森の奥に捨てられたとしても、私は安全で、守られている。
無印で白い靴とスパッツ、ユニクロでパンツとキャミソール購入。英国調チェックのパンツ。おうちに帰って夜更かしして、寝る。眠りにおちる直前に、どこかでパーティーがあっていることを思い出す。