老人は山頂を目指す

夜、お茶をいれて、レディボーデンにカシスのお酒をかけたものを食べながら、妹と富士山の話をした。老人は山頂を目指すけど、私たちも同じ。「秋の寒い風がなんともいえず懐かしいのだ」と泣くようなことも今はない。全ては少しずつ良くなっている。蛍光灯の切れかけた薄暗い廊下で「神様に祈ったことはあるか」と問われ、祈ったような祈ってないような、いつでも祈っているような、でも私が神様だったらあなたは絶対に助けない、と立ち止まってまっすぐ目を見て言っても誰も信じない。5年前に、きっと5年後は忘れてると思っていた約束は結局まだ覚えているが、電柱の下に置かれた花束は枯れたままでもう誰も見ない。