世界一美しいお昼寝

土曜日。仕事終わって家事を済ませ、日曜の魚釣りに向けて買出し。レジャーシート、無印の麻素材の帽子、い草の枕、アイポッポに繋ぐ用の小さいスピーカー、お菓子、日傘、折り畳み式の椅子等。
日曜日。長崎県川棚町にある魚雷発射試験場跡地で釣りをしよう、という催しがあったのでのこのことついて行きました。朝5時出発。メンバーはマノさんとギルさんとキツネさんとあと名前不明の方と、要はFFオフ会だったので「こん、くそおたどもがぁ!」と言いたかったけど耐えた。オタの彼女として、私、頑張ってます!車のドアを開けたらバラメグが聞こえてくるっていう光景にもだいぶん慣れました。オタに染まりたくない一心で(気を抜くとついエロ漫画の話等で盛り上がってしまう)車中では厳選して持ってきたCDをかけていたのですが、fancy face groovy nameを聞いたオタクのお兄さんに「なにこの兄損?(可愛い声の曲は全部兄損と思うオタ回路)」て言われたので手斧で頭をかち割ってやろうかと思いました。オタとサブカルの全面戦争がいまここに…!しかし私はこの美しい日曜日を、鮮血で真っ赤に染めることなどなく優雅に堕落して過ごすつもりであったのでスカートを翻してウフフと微笑んだ(目は据わったまま)。
ところで、私は魚釣りをしたことがない上あまり興味もないので、ただひたすらバカンスなお昼寝を目的としていたのですが、一応ものすごく退屈したら困るので妹に釣竿を借りて行きました*1。しかし、なんか面倒くさそうだったので全然釣らなかった。そのくらい堕落しきった一日でした。
折り畳み式の椅子に日傘を差し、それを誰もいない波打ち際に置いて、海を眺めたり、スカートを濡らしながらやどかりを触ってみたり、松の木陰に敷いたレジャーシートに寝転がって、持ってきた文庫本をぱらぱらめくっては眠り、お菓子を齧っては眠り、退屈したら釣竿をもてあそんだり(隠喩)、音楽を聴いて口笛を吹いたり、岩陰に寝そべって空を眺めたり(鳶がぷかぷか浮いていた)、それにも飽きたら釣り上げられた小さな魚をつついて、また眠くなったらうとうとして、アイスを食べて、廃墟を探検して、写真を撮って、昼顔を眺めて、真っ黒いちょうちょを追いかけて、気がついたら夕方になっていた。打ち上げられた水死体のようにぐったり寝そべる私の生死を確認しに蝿や小さな虫たちが体の上に止まったりしたけど、それを払うのさえ億劫だった。耳の横を時折ブウーンと羽虫が通り過ぎる。私の今日の一日は足穂の「セピア色の村」みたいな(それにしてはちょっと暑過ぎたけど)静かで真っ白い日曜日で、レヂオンドンノール授与式の代わりに真っ黒い大きな蝶がやってきて、私の目の前で飛んで見せてくれた。日傘越しに当たる太陽はじりじりと熱く、黒い蝶は眩しいくらい白い砂利の上を影のようにちらちらと飛んだ。私の眼前で何度も輪を描いた。蝶は地面に降り、打ち上げられて干乾びた小さな魚の上に止まった。その光景を見たのは私一人で、白と黒のコントラストに目がくらくらして倒れそうだった。白昼夢だったかもしれない。透き通った日本兵の代わりにあの真っ黒い蝶が、私を連れ去りにきたのかもしれない。
一日中、日光に当たってくたびれたので夕ご飯も辞退して帰宅。きれいな写真を一枚もらった。
帰ってきて妹に今日の写真を見せたら「あの映画みたいじゃない。あのー、ホラ、顔を青く塗ってダイナマイトで自爆するやつ。オープンカーで二人が逃げるやつ」と言われたので、今日は世界中で一番美しいお昼寝が出来たことを確信した。








☆おまけ☆

アイスうめー。

*1:よく考えたら普通女子はマイ釣竿なんか所持してないよね…。私たち姉妹は少し奇妙なものを手元に置きたがりなので部屋が片付かないのですが、その中でもシタールが部屋に置いてあるのはちょっと面白い光景。その他ホルマリン漬けの鮫の軟骨、ピンクレモネードが入っていた空き瓶、クラリネット、ピアニカ、トランペット、カンラン石や各種の石、廃墟になったシルバニアファミリー森のおうち、歯顎の石膏模型、キャンディーの包み紙を集めた箱などが並ぶ。