水玉ベイビー

土曜日。お昼頃、病院へ。その後、草間彌生*1を見に熊本へ行く。ぎっしり詰まった水玉やぎっしり生えた突起物をぷちぷち潰したい衝動にかられる。どの作品も、1mmくらいの距離で見たり1mくらいの距離で見たりすると、時々部屋を真っ暗にして目を開けてると見える、とても高いところからすごいスピードで視点が自分のところにやってくる風景みたいだった。きらきらしてる作品も水玉の作品も、なにやら宇宙っぽかった。一番好きだったのは毛や突起物が生えた水玉のテーブルセット。テーブルにも椅子にも柔らかそうな毛と突起物がたくさん生えてて、テーブルの上の果物もお皿も何もかもが可愛い水玉で塗られていた。女子が座ったら妊娠して水玉の赤子が生まれるテーブルセット。それから、鏡がたくさん重なってどこにいても自分の姿が写る部屋があって、そこに音君を閉じ込めてみたかった。ザ・鏡地獄。この日ほど音君を連れてったら面白かったろうなぁと思った日もないです。
遊園地にあるふわふわはビニール製ではなく、どうやら何かの生き物であるらしい。皮膚は全て柔らかくて長い毛に覆われており、その生き物がどのような形をしているのかを知ることは出来ない。肉と肉の隙間に体を差し込んで生き物の体内に入り込む。内側の肉は白地に赤の水玉模様をしている。暖かくふにゃふにゃした肉の上で飛び跳ねていると、少しずつ水玉の肉が迫ってきていることに気が付く。内壁に生えた柔らかい突起物は女の子の顔をべろりと撫でながら伸縮を繰り返している。肉はもう身動きが取れないくらいに迫ってきており、女の子はゆっくりと息をするみたいに水玉の赤子の中で圧死する。その横を半透明の小さな生き物が隙間をつるりと抜け出して、次の隙間へ。新しい女の子は椅子に座り、また水玉の赤ちゃんを産む。その繰り返しである。

美術館を出てパルコへ。福岡にはパルコがないので、私はパルコのある土地に行くと特に用もないのに嬉しがって入りたがります。普段、福岡ではなんとなく躊躇して踏み込めないお店にも嬉しがって入る。で、普段入らないようなお店で蜘蛛の巣に星がたくさんひっかかった模様の長靴を買う。星座のような蜘蛛の巣。真夜中の蜘蛛の巣。今年はまだ全然雨が降らないけど、雨が降ったら蜘蛛の巣には水滴がついてとてもきれいなのだ。結局、熊本では水色のケースに入ったチークとアイシャドウ、長靴、美術館で売ってたポストカード2枚を手に入れて帰宅。帰ってきてネットをしているうちに、紅殻の話が怖くて眠れなくなる。

日曜日。子猫を見に実家へ帰る。2匹の子猫の名前は「菊次郎」と「さき」らしい。無言で遊んでいた。子猫や子犬はお菓子と同じようなもので、触れすぎると罪悪感を感じるのでほどほどにして退散。甘いものや可愛いものには人を堕落させるような予感がある。

その後、人類の進化について予想しながら山奥の川に行って石投げの練習。夕方の森には青い梅がたくさん落ちていて、時々果物の匂いがする。平べったい石を探して、回転させないように押し出すように石を投げる。水面に平行になるように投げる。日が暮れてきて、蛇が泳ぐ滝つぼが真っ黒になり、急に怖くなったので慌てて転びそうになりながら車に戻る。帰り途中でうどんを食べる。

ゲーム画面をぼんやり眺めながらマシュマロを口いっぱいに頬張ってうたたね。12時過ぎにようやく自分の部屋に帰宅。