プロポーズ

妹とショッピングモールへ遊びに行く。家具屋さんで白い棚や小さなシャンデリアなどを見る。レースがかかったベッドにまるで自分の部屋にいるときのような態度で腰掛けて、この部屋に住みたいね、あの額縁には昔あのお店で買ったポストカードを入れて飾ろう、とかなんとかマシンガンのようなスピードで喋っては、疲れて少し沈黙する。ここ数日、妹は”あの感じ”のちょっと怖いようなひかった目をしている。私もきっとずっとこんな目をしていたのだろう。今の私にはない目である。ガラスのコップの縁を指でなぞり、手に取って重さを確認して、また元の場所に置く。
視線をコップに向けたまま、突然「二人で子供を育てようよ。どこかからかわいそうな子供をもらってきて」なんて言い出すので、よく言葉を咀嚼できないままにああそれもいいかもなぁなどと思ってしまったよ。吸血鬼に両親を殺されたかわいそうな女の子を黒い森で拾って、二人で大事に育ててもいいかもしれない。街や田舎を転々としながら、三人で暮らしてもきっと楽しいだろう。十年後はどこに住む?私達が子供の頃に住んでいた、怖いおじさんの銅像がある街に住む?(妹はその銅像の前を通る度に泣き叫んでいた)またどこかの国の港で誕生日を祝おう。年老いたら二人で魔女になろう。二人で暮らそう、なんて、こんなにも永遠じゃないことを悲しく思ったことはない。